Corporate & Tax Global Update Vol. 98(2024年9月号)
日本経済産業省及び金融庁による令和7年度税制改正要望の公表、オーストラリアにおける労働者のつながらない権利の導入等の最新情報をお届けします。
主要記事
日本
- 日本:令和7年度経済産業省、金融庁税制改正要望のポイント 2024年8月30日、経済産業省及び金融庁は令和7年度税制改正要望を公表した。
アジア
- インドネシア:株式保有の報告に関する規則の改正及び公開会社の株式に対する担保設定の報告義務の導入 2024年8月28日、インドネシア金融サービス庁(OJK)が制定した公開会社の株式の保有又は保有変更の報告及び公開会社の株式担保の報告に関するOJK規則第4号(2024年)が施行された。従前の規則が改正され、公開会社の株式を直接又は間接的に少なくとも5%保有する者による情報開示の程度が高められ、また公開会社の株式に対する担保設定について新たな報告義務が設けられた。
豪州
- オーストラリア:労働者のつながらない権利の導入 オーストラリアでは、2024年8月26日(小規模企業には2025年8月26日)から、労働者の「つながらない権利」(right of disconnect)が新たに導入された。同権利は、勤務時間外に使用者が労働者と連絡を取ることを一切禁止するものではなく、労働者が勤務時間外にメッセージを確認、返信してくることを、使用者は期待することができないことを意味する。使用者は、労働者、ビジネス、業界及び労働力の観点から、勤務時間外の連絡が合理的な連絡といえるのか検討する必要がある。
欧州
- 英国:セクシャルハラスメント防止の合理的な措置のための平等人権委員会ガイダンス 2024年10月26日以降、雇用主は従業員に対するセクシャルハラスメントを防止するために「合理的な措置」を講じる積極的な義務を負う。かかる義務は、雇用審判所の賠償請求額の増額や、平等人権委員会(EHRC)による執行につながる可能性がある。第三者によるハラスメントも対象となる。ハラスメントが発生する可能性のある状況をリスク評価し、効果的なハラスメント防止策を実施することに改めて焦点が当てられ、予防措置の有効性は常に検証されなければならない。
- ドイツ:統括会社を用いたビジネスモデルへの変更に対するExit Taxを否定する租税裁判所判決 米系多国籍企業グループによる、統括会社を用いたビジネスモデルへの変更を目的とした欧州事業の再編について、ドイツの租税裁判所はExit Taxを否定した。
- スイス:スイス連邦最高裁、弁護士依頼者秘匿特権の範囲を明確化する重要な判断 2024年8月6日、スイス連邦最高裁判所は、犯罪捜査における弁護士と依頼者との間の秘匿特権の範囲について重要な明確化を行う2つの決定を下した。最高裁は、既存の又は予期される法的紛争に関する外部弁護士による内部調査に基づき作成された、事実の発見とこれらの事実の法的評価に関する報告書が弁護士依頼者秘匿特権の対象となることを確認した。また、最高裁は、秘匿特権で保護される情報を選択的に開示した場合に、秘匿特権の完全な放棄とならないことを確認した。他方で、金融機関が自主的に当局に共有した情報は保護を失うこととなる結果となり得ることに留意が必要である。
中東
- 中東:中東地域における税務アップデート バーレーン税務当局は、VATに関するガイダンスの新たなバージョンを公開し、インターチェンジフィーの課税上の取扱いの明確化等を行った。その他、UAE、オマーン及びクウェートの税務に関するアップデートを紹介する。
ESG/Sustainability
- EU:EUにおけるサプライチェーン・デューデリジェンス – 企業持続可能性デューデリジェンス指令(CS3D)に関するFAQの公表 2024年7月25日、EU域内で活動する大企業に新たなデューデリジェンス義務を課す企業持続可能性デューデリジェンス指令(CS3D)が発効した。企業がこのデューデリジェンス義務を確実に遵守するためには、CS3Dの重要な要素を理解することが不可欠であり、本FAQはその一助となることが期待される。