Corporate & Tax Global Update Vol. 90(2024年1月号)
金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」報告の公表、OECDによる全世界規模の2022年相互協議統計の公表等の最新情報をお届けします。
主要記事
グローバル
- グローバル:OECDが全世界規模の2022年相互協議統計を公表 2023年11月14日、OECDは2022年の相互協議手続(MAP)統計を公表した。このMAP統計は、BEPS行動計画14に従い作成されたもので、租税条約国間における租税関連紛争解決の有効性と迅速性を奨励及び改善するための広範な取組が反映されたものである。多国籍企業の税務担当者にとって、この全世界規模の統計を理解することは、グループが進出するどの法域で移転価格等の租税条約に関連する税務紛争が多く、またその紛争解決手段としてMAPが機能しているかの全体像を把握できるという意味で非常に有益である。
- 日本:金融審議会「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」報告の公表 金融庁は、2023年3月2日の金融審議会総会において、公開買付制度及び大量保有報告制度等の見直しについて諮問した。「公開買付制度・大量保有報告制度等ワーキング・グループ」は、全6回の会合にわたり、近年の市場環境の変化に伴う様々な課題に対応すべく、市場の透明性・公正性の確保や、企業と投資家との間の建設的な対話の促進等の観点から、公開買付制度・大量保有報告制度及び実質株主の透明性のあり方について審議を行い、2023年11月25日に、同ワーキンググループによる報告が公表された。
- 日本: 「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に関するQ&A」の公表 本稿では国税庁が公表した「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に関するQ&A」について概説する。
- 香港:会社登記簿の新閲覧制度の第3段階の開始 会社登記簿上の個人情報に関する新閲覧制度の第3段階が、2023年12月27日から施行された。取締役等の関係者は、住所や個人識別番号などの保護情報の一般による閲覧を制限するよう申請できることとなった。
- ベトナム:Global Anti-Base Erosion rules(GloBEルール)にかかる新規則が2024年1月1日に発効 2023年11月29日ベトナム国会において、107/2023/QH15号法案が採択された。当該法案は、2024年1月1日に発効しており、Qualified Domestic Minimum Top-Up Tax及びIncome Inclusion Ruleの適用について定めている。
- EU:EUが制裁違反の執行を支援する2つの新たな枠組みに合意 2023年12月12日に、欧州議会及び欧州理事会は、EU制裁の執行に貢献する2つの新たな枠組みについて政治的合意に達した。かかる枠組みには、EU制裁違反に対する刑事犯罪規定及び罰則の調和、並びにEUによる資産回収及び没収の権限を強化するための新たな指令が含まれる。
- 英国:英国金融行為規制機構が広範囲に及ぶ上場規則の改正案を公表 英国金融行為規制機構(FCA)は、過去30年間で最も広範囲に及ぶ英国の上場基準の改革となる、上場規則の改正案を公表した。長期的な英国の上場会社数の減少や、一部企業が英国上場を避けている状況等の、英国資本市場の直面する課題に対応することを意図している。
- オランダ:事業体に関する税法上の組織属性の決定ルールの改正 オランダ税制改正により、オランダ法上のオープンリミテッドパートナーシップの税務上の属性の扱いが変更される見込みである。本改正による取り扱いの変更の影響は、オランダ以外の組織体にも影響が及ぶため、オランダへの投資を行っている多国籍企業にもインパクトが生じる。
- EU:企業の持続可能性デューデリジェンスに関する指令に関する暫定的合意 欧州連合理事会と欧州議会は、2023年12月14日、企業の持続可能性デューデリジェンスに関する指令(Corporate Sustainability Due Diligence Directive)に関する暫定的合意に達した。
- スイス:スイス不正競争防止委員会がグリーンマーケティングに関する新ガイドラインを発表 スイス不正競争防止委員会は、グリーンマーケティングに関する新しいガイドラインを発表し、環境に言及するマーケティングコミュニケーションのルールをより明確化した。スイスでは環境に言及したマーケティングコミュニケーションが真実性や明確性を欠く場合、不正競争行為に該当し、民事・刑事上の制裁の対象となる可能性があるため、同ガイドラインは、不正競争行為の該当性判断の参考となることが期待される。