英国の新法「Economic Crime and Corporate Transparency Act 2023」の成立
2023年10月26日、英国でEconomic Crime and Corporate Transparency Act 2023(「経済犯罪および企業の透明性に関する法律」。以下「本法」)が英国王の裁可を得て成立した。
英国政府によれば、英国は世界でも有数の規模を誇る開放的な経済国であり、国際的なビジネスにとって魅力的な国であるが、このような開放性は、悪人が詐欺やマネーロンダリングなどで英国を利用するリスクにさらすこととなる。その結果、英国内での重大な組織犯罪の資金源となったり、海外の腐敗を助長したりしており、このような違法なファイナンスの脅威が、適法なビジネスを弱体化させ、日々の社会や全ての国民生活に影響を与えているとしている。英国政府は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、ロシアの汚れた資金や英国の開放経済を悪用する外国人エリートを厳重に取り締まるため、Economic Crime (Transparency and Enforcement) 2022 Act(2022年英国経済犯罪法)を導入していたが、経済犯罪に取り組み、企業体の透明性を向上させるため、一連のより広範な改革を実現する本法を検討していた。
本法は、Company House(企業登記局)の改革、リミテッド・パートナーシップ(以下「LP」)の悪用を防止するための改革、犯罪が疑われる暗号資産を差し押さえ、回収するための法執行機関への追加権限の付与、マネーロンダリングやその他の経済犯罪に対処するために企業が情報共有することに対してより信頼性を与える改革など、非常に広範な内容を含んでいる。
英国に子会社や関連会社を有する、又はこれらを設立しようとする日本企業においては、本法を十分理解しておく必要があることから、本アラートで概要を紹介する。