独占禁止法違反行為に対する課徴金制度が導入されてから約40年が経過しました。課徴金制度は、今日に至るまでの数度の改正にもかかわらず、近年の企業活動の進展に即したものであり続けることが難しくなりつつあります。

公正取引委員会(「公取委」)は、上記のような問題意識に基づき、課徴金制度の在り方について専門的知見から検討を行うことを目的とし、2016年2月以降15回にわたり「独占禁止法研究会」(「研究会」)を開催し、裁量型課徴金制度を含めて、企業活動のグローバル化・多様化・複雑化に適正に対応しうる課徴金制度のあり方について検討を行ってきました。

そして、研究会における議論に基づき、2017年4月に、「独占禁止法研究会報告書」(「報告書」)が発表されました。報告書においては、現行の課徴金制度には、①算定・賦課方式が硬直的であり、課徴金納付命令の内容が不合理・不平等なものとなる可能性がある(たとえば国際市場分割カルテル事案において日本に所在する需要者に対する売上額がない外国事業者に課徴金を賦課できない等)、②事業者が調査に協力するインセンティブが十分ではない、③主要な諸外国で採用されている国際標準的な制裁金等の制度との整合性の欠如という問題があると指摘されています。その上で、上記の現行課徴金制度の問題点を解消するとともに、また、事業者に調査協力インセンティブを与えるという観点から、法定された客観的な算定・賦課方式に従って一律かつ画一的に課徴金を算定・賦課する硬直的な課徴金制度を見直し、課徴金制度に一定の柔軟性を認めるべきとの方向性が示されています。

報告書は具体的な改正内容まで示すものではなく、報告書の内容のとおりに改正がなされるわけではありません。もっとも、公取委は、報告書の内容を踏まえ、2018年の通常国会における提出を目指して改正案の検討作業を進めており、報告書は、今後の法改正を巡る議論の土台となると思われます。

本アラートでは、①課徴金の算定方法の見直し、②調査協力の促進のための諸制度の導入、③手続保障への配慮の各点に関し、報告書において示された今後の課徴金制度改正の方向性を概説します。

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