米国通商法第301条に基づく中国産品に対する関税措置についてWTOのパネル(紛争解決のための小委員会)が報告書を発行
2020年9月15日、「米国―中国産品に対する関税措置」(DS543)を審査している世界貿易機関(WTO)のパネル(紛争解決のための小委員会)は、パネル報告書を発表した。当該報告書では、米国が米国通商法第301条に基づき中国の特定の物品に対して課した関税は、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)の諸規定に違反していると判断した。
パネルは、報告書に記載された理由に基づき、以下のように結論付けている。
a. 両当事者は、紛争解決に関する規則及び手続に関する了解(DSU)第12.7条でいうところの「相互に満足すべき解決」に達しておらず、また、本紛争で問題となっている措置についてWTOにおける紛争解決措置をとる権利を放棄していない。
b. 中国が争っている措置はすべてパネルへの付託事項の範囲内であり、中国のパネルに対する要請の中で特定された第1の措置(リスト1製品(産業機械、電子部品等)に対する25%の追加関税)及び2019年5月9日に修正された第2の措置(リスト2製品(プラスティック製品、集積回路等)に対する25%の追加関税)について、パネルの判断及び勧告を行うことが適切である。
c. 争われている措置は、1994 年GATT 第I:1条、II:1 (a) 条及び 第II:1 (b) 条に違反している。
d. 米国は、当該措置が1994年GATT第XX (a) 条に基づき正当化されることを疎明する責任を果たしていない。
パネルは、以上に基づき、問題となっている措置が 1994年GATT の第 I:1 条、第 II:1 (a) 条及び第 II:1 (b) 条に違反していると結論付けた。
DSU第3.8条によれば、対象となる協定に基づき負っている義務に違反した場合、当該行為は、無効化又は侵害の事案を構成するものと推定される。パネルは、問題となっている措置のうち1994年GATTの特定の規定に違反している部分は、1994年GATT 第XXIII:1 (a) 条が定める行為類型(締約国による当該協定に基づく義務への違反)により、当該協定に基づく中国の利益を無効化又は侵害していると結論付けた。
パネルは DSU 第 19.1 条に基づき、米国に対し、米国がとっている措置を 1994年GATTに基づく義務に適合させるよう勧告した。