米国における訴訟回避の方策:フォーラム選択条項(Forum Selection Clause)
前回のクライアントアラートでは、米国における訴訟回避の方策としてフォーラム・ノン・コンビニエンス(Forum non convenience)の法理を取り上げた。今回は、米国における訴訟回避のためのもう一つの方策として、フォーラム選択条項(Forum Selection Clause)を取り上げる。
フォーラム選択条項は、契約当事者間において、将来紛争が生じた場合の紛争解決フォーラムをあらかじめ合意する条項である。フォーラム選択条項には、当事者が指定するフォーラムに訴訟を提起することが義務付けられているもの(排他的・義務的条項)と、当事者は指定するフォーラムに任意に訴訟を提起することができるもの(任意条項)がある。
日本企業が契約書において、日本に所在する裁判所を排他的・義務的な紛争解決フォーラムとして指定するフォーラム選択条項を規定した場合には、当該フォーラム選択条項の有効性は一般的に認められているほか、仮に当該条項に違反して相手方が米国連邦裁判所に訴訟を提起した場合にも、後述のとおり、当該訴えはフォーラム・ノン・コンビニエンスを理由に却下されることとなる。したがって、このようなフォーラム選択条項を契約書に規定することは、日本企業にとって、米国訴訟を事前に回避するための有益な手段となる 。
本稿では、排他的・義務的なフォーラム選択条項の有効性について簡単に触れた後、当該フォーラム選択条項に違反して訴訟が提起された場合、フォーラム・ノン・コンビニエンスを理由に訴えの却下ができるとした連邦最高裁判所の判例を紹介し、その後、フォーラム選択条項が排他的・義務的なものであると判断されるためにはどのような文言を用いる必要があるかを検討するため、フォーラム選択条項が排他的・義務的なものか、任意的なものかかが争われた最近の連邦控訴裁判所の判断を紹介する。