輸入後の移転価格調整をさらに困難にする中国税関の新たな実務
現在、中国では、輸入後の移転価格調整に対応して関税評価の調整を行う統一的な枠組みが存在しないため、中国で事業を行う企業は、通常、税関の自主開示制度に依拠して移転価格調整を報告し、中国税関が輸入価格の上方修正の調査を開始することができるようにしている。過去には、このプロセスは、通常、移転価格調整がもたらす製品の輸入価格の差異を反映した、税関の申告書(0110 CDF)の発行により終了していた。0110 CDFによって、企業は、移転価格調整に関係する過少支払いとなっていた関税及び輸入付加価値税(VAT)を支払うことになるが、0110 CDFは関連企業間の売買価格の増加させる外国仕向け送金をするに際しての裏付け文書として使用することができていた。0110 CDFは、中国の外国為替管理体制において、外国仕向け送金に必須の関連文書であった。
しかし、2021年後半から、輸入後の移転価格調整に関する中国税関との和解後、必要な0110 CDFを取得することが難しくなっていることが確認されている。中国税関は、代わりに、関税及び輸入付加価値税の支払不足額を回収することを目的とする「9700 CDF」を発行するようになっていることに留意すべきである。この文書は、過少支払いであった関税及び輸入付加価値税の回収のみを示すものであり、輸入価格の変化を反映しないため、移転価格調整を実施するための資金の海外送金を裏付ける文書として認められない。2023年初頭の時点で、0110 CDFの発行を拒否し、代わりに移転価格調整に応じて9700 CDFを発行することが中国税関の慣行となってきていたことがわかっている。
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