日本企業を被告とする訴訟の送達方法に関する事例の紹介
本アラートでは、日本企業を被告とする訴訟における送達方法について判断をしたデラウェア州Superior Courtの2023年11月13日付判決を紹介する。
米国訴訟で日本企業が被告とされた場合、米国と日本はいずれもハーグ送達条約の加盟国であるため、米国外に所在する日本企業に対して訴状等を送達する際には、ハーグ送達条約に基づき送達されることとなる。具体的には、日本の外務省に対して送達を要請し、日本の裁判所を経由して被告である日本企業に文書が送達される。また、送達をする訴状等については、日本語の翻訳を添付する必要がある。
しかし、このようなハーグ送達条約に基づく送達ではなく、訴状等が原告から日本企業に対して直接郵送されたり、日本企業の米国の子会社に対して郵送されたりすることがある。このような場合には、被告は、送達の有効性を争って裁判所に対し訴え却下の申立て(motion to dismiss)をすることができる。送達が無効であると判断された場合には、訴えは初期の段階で却下され、原告は、改めてハーグ送達条約に従った送達をやり直さなければならない。この場合、原告にとっては時間とコストを要することとなるため、その結果、原告が訴えを断念する可能性もある。
本事案では、原告が日本企業に対して行った訴状等の送達がハーグ送達条約に基づいた適切な送達とは言えないとして、訴えの却下を認めた事例である。米国訴訟の被告となり得る日本企業にとっては、一つの事例として参考となると思われるため、本アラートにて概説する。